血液・腫瘍内科について

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研究紹介

血液・腫瘍内科では、臨床に基づいた研究を進めています。血液疾患は、臨床と基礎的な研究が密接に結びついている分野です。基礎的な研究の成果が、実際の患者さん治療の著しい進歩に繋がってきました。実臨床において、分子生物学や細胞生物学の知識や考え方を導入することが出来、同時にそれらが活かされる領域です。血液・腫瘍内科では常に、Bed(臨床)からBench(研究)へ、Bench からBedへと相互に還元しながら、患者さんの治療の質をよりよく高めてゆく努力を続けています。
当科で現在行われている主な研究を紹介します。新しい考えや関心を持たれた若い先生方の参加を心からお待ちしています。

造血幹細胞移植における合併症の早期発見と治療

造血幹細胞移植は血液疾患において高い有効性を誇る治療法ですが、その重篤な合併症として肝中心静脈閉塞症(veno-occlusive disease; VOD)があります。診断時には重症化して治療が困難であるため、早期診断法が求められていましたが、当科では消化器内科との研究で、超音波カラードプラーエコーによる門脈分枝レベルでの血液逆流がVODで認められることをはじめて見出し、この検出がVODの早期発見に有効であることを明らかにしています(Yoshimoto et al, 2001. 2003, Hashiguchi et al, 2005)。現在、さらにより正確な診断・治療を行うため、血管内皮細胞との関連および凝固線溶系を介した治療法の研究を行っています。

 
  VODの超音波カラードプラーエコー像。造血幹細胞移植後Day6より門脈分枝レベルでの血液逆流を認め、
  その後
VODの治療により改善していることがわかります。

悪性リンパ腫の病態と治療

リンパ球系の腫瘍である悪性リンパ腫は、その発症機序や病態において依然として不明な点の多い疾患です。その悪性リンパ腫とC型肝炎ウイルス(HCV)感染症に疫学的な関連があることから、当科では、HCV感染が悪性リンパ腫の発症機序に関与していることを想定し消化器内科と研究を進めています。これまでに390症例の検討を行い、HVC感染患者において、すでにBリンパ球がモノクローナルに増殖している症例や染色体転座t(14;18)が認められる症例が存在することを明らかにするとともに、これらBリンパ球の異常がHCV感染症の治療により消失することを見いだしています(Ohtsubo et al, 2009)。今後、HCV感染がBリンパ球を刺激するメカニズムを研究してゆくことで、悪性リンパ腫の病態に迫ることができると考えています。


 HCV感染症患者に認められたB細胞のクローン性増殖。IFN療法でHCV陰性化とともにB細胞異常が消失し、
 ウイルス再燃時に再度クローナルなB細胞増殖が出現しています。


また、悪性リンパ腫の治療において効果的な治療を行うためには、リンパ腫の病型に加えて、疾患をより詳細に分類し予後を予測するための指標(マーカー)が求められています当科では、Skp2という細胞周期関連遺伝子が悪性リンパ腫の予後を正確に捉える重要なマーカーになることを見いだし(Seki et al, 2003)、さらに病理学教室との共同研究で1057例におよぶ大規模な臨床研究からその高い有効性を明らかにしました(Seki et al, 2009,2010)。

 
 悪性リンパ腫の生存曲線。予後因子として従来のマーカーに比べSkp2が有用であることが示されています。

現在、前方視的臨床研究を準備するともに、よりよい指標の探索を目的として、DNA microarrayにより関連遺伝子の発見を目指しています。

成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)に対する臍帯血移植成績

Aggressive typeのATLLは予後不良である事が知られており、1987年に同種骨髄移植の報告以降、有用性がさまざまな施設で報告されてきた。近年、幹細胞源として、骨髄のみならず、臍帯血も用いられるようになり、治癒が期待できる治療法として注目されています。 当科では、ATL患者10症例に対し、臍帯血移植を行い、2年全生存率が40%、移植時寛解例の6例中4例が長期生存している事を報告しています(Nakamura et al.2012)。さらに、症例を蓄積し検討すると、移植前に化学療法に感受性があった8例中6例が長期生存し、さらにATL-PI low群においては臍帯血移植により、予後が改善する事をあきらかとしています(Oku et al.)。現在、さらなる症例蓄積行っています。

 

骨髄増殖性腫瘍(MPN)の病態と治療

前述の、リンパ球系が腫瘍性に増殖する悪性リンパ腫とは異なり、多能性幹細胞がクローン性増殖による疾患を骨髄増殖性腫瘍(MPN)といい、赤血球系が増殖する真性多血症、血小板系が増える本態性血小板血症、骨髄に線維化をおこす原発性骨髄線維症に分類されます。近年、このように多彩な疾患であるにもかかわらず、シグナル伝達分子であるJak2の変異が共通して認められることが分かってきました。当科では、骨髄増殖性腫瘍140例において集中的にJak2変異の検討を行い、それらの変異を見いだし表現型との関連を明らかにし(Takata et al.2013)、Jak2変異例では血栓症が有意に多く発症しており、MPNにおいてJak2変異は血栓症のリスクである事を報告しています。
一方で、特に難治性疾患である原発性骨髄線維症の病態において、Periostinという新規の線維性タンパクが骨髄のストローマ細胞および間質に高発現していることをはじめて見出しました。さらに腫瘍細胞の増加および維持はたらく線維性タンパクPeriostinの発現が、腫瘍性細胞からのTGF-bによって制御されていることを明らかにしています(Oku et al, 2008)。

 
 原発性骨髄線維症の骨髄標本。Periostinが強く染色されています(左)。
 骨髄増殖性腫瘍においてJak2変異は血栓症のリスクである。


腫瘍細胞からのシグナルによって産生されるPeriostinが腫瘍自身の増殖・維持にはたらくという一連のループが骨髄線維症の病態を形成していると考えられ、このループをブロックすることで疾患の進展を抑えることができると期待しています。これら分子生物学的なアプローチと細胞生物学的レベルの研究から、MPN疾患の制御法につなげてゆきたいと考えています。
 

ゲノム編集技術を用いた遺伝子修復

遺伝子治療という概念は1970 年代より提唱され、1990年にアデノシンデアミナーゼ欠損症の患者に対して、世界初の遺伝子治療が行われました。現在に至るまで様々な遺伝子治療の臨床研究がなされてきましたが、遺伝子導入方法や安全性を含めた様々な問題点が未解決であり、一般には普及していません。そういった中で、近年、効率的なゲノム編集技術としてTALENやCRISPR/Casシステムが注目されています。このゲノム編集技術を用いることで、様々な生物種おいて目的とする遺伝子の改変が可能となり、新たな遺伝子治療法として期待されていています。当科では、血友病Bなどの先天性凝固異常症に対するCRISPR/Casシステムを用いた遺伝子修復について検討しています(Morisige et al.)。そして、将来的には、患者由来人工多能性幹細胞 (iPS細胞)に対して遺伝子修復を行うことで、再生医療へ応用を考えています。

 

 

論文

造血幹細胞移植における合併症の早期発見と治療

  • Yoshimoto K, Yakushiji K, Ijuin H, Ono N, Hashiguchi M, Imamura R, Ogata H, Okamura T, Sata M, Hashimoto H.
    Colour Doppler ultrasonography of a segmental branch of the portal vein is useful for early diagnosis and monitoring of the therapeutic course of veno-occlusive disease after allogenic haematopoietic stem cell transplantation.
    Br J Haematol. 2001,115(4): 945-8.
  • Hashiguchi M, Okamura T, Yoshimoto K, Ono N, Imamura R, Yakushiji K, Ogata H, Seki R, Otsubo K, Oku E, Kuroiwa M, Higuchi M, Kato K, Taniguchi S, Gondo H, Shibuya T, Nagafuji K, Harada M, Sata M.
    Demonstration of reversed flow in segmental branches of the portal vein with hand-held color Doppler ultrasonography after hematopoietic stem cell transplantation.
    Bone Marrow Transplant. 2005, 36(12): 1071-5.
 
  • 悪性リンパ腫の病態と治療

    Ohtsubo K, Sata M, Kawaguchi T, Morishige S, Takata Y, Oku E, Imamura R, Seki R, Hashiguchi M, Osaki K, Yakushiji K, Kanaji T, Yoshimoto K, Ueno T, Okamura T.
    Characterization of the light chain-restricted clonal B cells in peripheral blood of HCV-positive patients.
    Int J Hematol. 2009, 89(4): 452-9.
  • Seki R, Okamura T, Koga H, Yakushiji K, Hashiguchi M, Yoshimoto K, Ogata H, Imamura R, Nakashima Y, Kage M, Ueno T, Sata M.
    Prognostic significance of the F-box protein Skp2 expression in diffuse large B-cell lymphoma.
    Am J Hematol. 2003, 73(4): 230-5.
  • Seki R, Ohshima K, Fujisaki T, Uike N, Kawano F, Gondo H, Makino S, Eto T, Moriuchi Y, Taguchi F, Kamimura T, Tsuda H, Ogawa R, Shimoda K, Ymamashita K, Suzuki K, Suzushima H, Tsukasaki K, Higuchi M, Utsunomiya A, Iwahashi Masahiro, Imamura Y, Tamura K, Suzumiya J, Yoshida M, Matsumoto T, Abe Y, Okamura T.
    Prognostic impact of immunohistochemical biomarkers in diffuse large B-cell lymphoma in the rituximab era.
    Cancer Science 2009,100:1842-1847.
  • Seki R, Ohshima K, Fujisaki T, Uike N, Kawano F, Gondo H, Makino S, Eto T, Moriuchi Y, Taguchi F, Kamimura T, Tsuda H, Shimoda K, Okamura T.
    Prognostic significance of S-phase kinase-associated protein 2 and p27kip1 in patients with diffuse large B-cell lymphoma:effects of rituximab.
    Annals of Oncology: 21: 833-841, 2010

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