Research研究
ゲノム編集技術を応用したアントラサイクリン関連心毒性に関連する遺伝子多型の機能解析
白血病の治療薬の一種であるアントラサイクリン系薬剤(ドキソルビシンやダウノルビシン等)には用量依存性の重篤な副作用であるアントラサイクリン関連心毒性(anthracycline-induced cardiotoxicity; ACT)があります。ACTを起こす機序として活性酸素種(ROS)産生による細胞膜への損傷、TOP2BやTOP1MTの阻害によるアポトーシスの誘導などが示唆されていますが、遺伝的素因として、これまでにいくつかの一塩基多型(single nucleotide polymorphisms; SNPs)が報告されています。ゲノムワイド関連解析(GWAS)等の解析を経て、SNPsとさまざまな疾患の罹患率や薬剤応答性などと相関することが判明してきていますが、ヒトは各個人で多様な遺伝的相違があるため、特定のSNPのみの機能を評価するのは困難であるのが現状です。
当科ではCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いて、アントラサイクリン関連心毒性との関連が示唆されているCYBA遺伝子のSNP(rs4673)の一塩基のみを改変したiPS細胞を作成しました。このiPS細胞を培養皿上で心筋細胞に分化させることで、心筋特異的に発現するCYBAのSNPsと薬剤毒性との関連性を検討しています。従来個々のSNPを評価するのが困難でしたが、この実験系を用いることで共通の遺伝的背景でSNPの機能評価が可能になります。
SNP(rs4673)を一塩基のみゲノム編集を行い、3パターンのiPS細胞を作成
拍動する心筋細胞