Research研究

悪性リンパ腫の病態と治療

血液・腫瘍内科では、臨床に基づいた研究を進めています。特に血液疾患は、臨床と基礎的な研究が密接に結びついている分野です。実際の診療を行う上でも、分子生物学や細胞生物学の知識や考え方が要求され、同時にそれらが活かされる領域です。血液内科では常に、ベッド(臨床)からベンチ(研究)へ、ベンチからベッドへと相互に還元しながら、患者さんの治療の質をよりよく高めてゆく努力を続けています。

 

リンパ球系の腫瘍である悪性リンパ腫は、その発症機序や病態において依然として不明な点の多い疾患です。大きく分けて二つのテーマの研究を進めています。

悪性リンパ腫の治療において効果的な治療を行うためには、リンパ腫の病型に加えて、疾患をより詳細に分類し予後を予測するための指標(マーカー)が求められています。血液・腫瘍内科では、Skp2という細胞周期関連遺伝子が悪性リンパ腫の予後を正確に捉える重要なマーカーになることを見いだし(Seki et al, 2003)、さらに病理学教室との共同研究で1057例におよぶ大規模な臨床研究からその高い有効性を明らかにしました(Seki et al, 2010)。

 

悪性リンパ腫の生存曲線。予後因子として従来のマーカーに比べSkp2が有用であることが示されています。

現在、前方視的臨床研究でのサブ解析を行い、よりよい指標の探索を目的として、DNA microarrayにより関連遺伝子の発見を目指しています。

 

また、DLBCLにおけるMYD88遺伝子変異の臨床的意義について、Formalin-Fixed Paraffin-Embedded (FFPE)検体を用いてMYD88 L265P変異を同定するためにguanine-quenching probe(QP法)を用いた高感度・自動検出法を構築し解析をすすめています。ABC-DLBCLでは、抗原依存性のBCRシグナルが重要な役割を果たしていると考えられている。MYD88 L265P変異の有無は、ABC-DLBCLにいおいて、BTKのC481残基に非可逆的に結合するBTK阻害剤ibrutinibの奏功の指標として注目されている。これら分子生物学的なアプローチと細胞生物学的レベルの研究から、悪性リンパ腫疾患の層別化治療につなげてゆきたいと考えています。

 

Seki R, Okamura T, Koga H, Yakushiji K, Hashiguchi M, Yoshimoto K, Ogata H, Imamura R, Nakashima Y, Kage M, Ueno T, Sata M. Prognostic significance of the F-box protein Skp2 expression in diffuse large B-cell lymphoma. Am J Hematol. 2003, 73(4): 230-5.

 

Seki R, Ohshima K, Fujisaki T, Uike N, Kawano F, Gondo H, Makino S, Eto T, Moriuchi Y, Taguchi F, Kamimura T, Tsuda H, Ogawa R, Shimoda K, Ymamashita K, Suzuki K, Suzushima H, Tsukasaki K, Higuchi M, Utsunomiya A, Iwahashi Masahiro, Imamura Y, Tamura K, Suzumiya J, Yoshida M, Matsumoto T, Abe Y, Okamura T. Prognostic impact of immunohistochemical biomarkers in diffuse large B-cell lymphoma in the rituximab era.

Cancer Science 2009 100(10):1842-7.

 

Seki R, Ohshima K, Fujisaki T, Uike N, Kawano F, Gondo H, Makino S, Eto T, Moriuchi Y, Taguchi F, Kamimura T, Tsuda H, Shimoda K, Okamura T.

Prognostic significance of S-phase kinase-associated protein 2 and p27kip1 in patients with diffuse large B-cell lymphoma: effects of rituximab.Ann Oncol. 2010 21(4):833-41

 

Seki R, Yamagishi S, Matsui T, Yoshida T, Torimura T, Ueno T, Sata M, Okamura T.

Pigment epithelium-derived factor (PEDF) inhibits survival and proliferation of VEGF-exposed multiple myeloma cells through its anti-oxidative properties.

Biochem Biophys Res Commun. 2013 22;431(4):693-7.

 

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